【藤本タツキ】17-21【短編集】あらすじ&感想

「ファイアパンチ」「チェンソーマン」を生んだ鬼才・藤本タツキ先生の短編集「17-21」
剥き出しの圧倒的才能が炸裂する藤本タツキ先生の初期短編集を紹介していきます。

17‐21のアイキャッチ画像です

目覚まし時計が鳴り響く室内、けだるそうに時計に手を伸ばす高校生。よくある物語の冒頭シーンですが、高校生はモンスターの姿です。朝ごはんを用意する母親もモンスターの姿。今日飼育係の仕事があるからと言葉を交わしていると、萌美ちゃんという友達が家に迎えに来てくれます。「別にあんたのために待ってるんじゃないからね」とツンデレ幼馴染風萌美ちゃんもモンスターの姿です。
そんな衝撃的なシーンで始まる物語。地球は宇宙人に侵略されてしまいあっという間に人類は滅亡してしまっていたのでした。高校生宇宙人は飼育係の仕事のため学校の飼育小屋へ向かいます。飼育小屋にいる2羽のニワトリですが、実は人間の生き残り「ユウト」と「アミ」の2人です。2人は学校にあったニワトリの被り物を被って変装をしています。宇宙人たちは人間を食料として食べますが、ニワトリは観たこともなく食べる文化もないため食べられることなく過ごせています。しかしそんな学校にニワトリを食べる文化を持つ宇宙人が転校してきてしまいます。「ユウト」と「アミ」は無事生還することができるのでしょうか。
高校生のありがちな朝のシーンから始まる本作ですが、さすがは藤本タツキ先生、怪物の見た目の宇宙人が日常を過ごすシーンがシュールです。実は「ユウト」にも秘密があり、最後には物語としての驚きもちゃんと用意されています。藤本先生は本作を2011年の大学入学前に上梓したとのことで、初々しい絵で描かれている本作です。

春休みの補習に自主的に参加した佐々木。補習を行う川口先生へ恋心を抱く佐々木は川口先生を神格視し神様だと確信しています。するといきなり教室の中に拳銃を持った男が侵入。天井めがけて発砲します。テロリストが侵入してきたと騒ぐ生徒たち。拳銃を持った男は、川口先生に振られたせいで人生がめちゃくちゃになったと喚きます。そんななか川口先生は、私には何をしてもいいから生徒には手を出さないで、と懇願します。男は川口先生に無茶苦茶な要求をし、生徒を助けるためなら、と川口先生も受け入れます。
しかし、それが許せない佐々木は勇敢にも男に立ち向かいますが、銃弾の標的となってしまいます。銃口を向けられた佐々木は走馬灯のように先生を神様だと思った瞬間のことを思い起こします。
進路調査で川口先生と面談をする佐々木。宇宙飛行士だった父は死んだら月へ行くんだと語っていたこと、死んだ父に会うために自分も宇宙飛行士となって月へ行き父と再会したいこと。そんな話を川口先生は馬鹿にせず真剣に聞いてくれます。「この世界に0パーセントなんてない」「物凄い小さい確率をみんなめんどくさいから0パーセントということにしている」と。
佐々木の川口先生への圧倒的熱量は奇跡を呼び起こします。ラストシーンはある種幻想的な場所で佐々木と川口先生が話すシーンで幕を閉じます。
藤本タツキ先生は本作「佐々木くんが銃弾止めた」がこの短編集の中で一番好きな作品とのことです。先生への熱い思いで常識的にはあり得ない現象を起こす佐々木、0パーセントを飛び越えた彼が起こす奇跡を皆さんもぜひ目撃してみてください。

生徒会長の伊吹は今日こそ告白するべく一緒に帰ろうとユリを誘います。
無骨な生徒会長は強い決意を持って、今日はいい天気なので一緒に帰ろうと声をかけますが、その瞬間大雨が降りだし風が吹き荒れます。
しかし伊吹の決意はそんなことでは折れません。帰宅へ向け校門へ向かっていると今度は、先生から卒業式の仕事があるから居残ってくれと声をかけられます。尋常ならざる決意の伊吹はいくら先生でも止めることはできません。熱意が伝わったのか先生もあきらめ気をつけて帰るようにと二人を見送ります。
帰り道、伊吹はユリへ卒業したら海外の大学へ行くことを伝えます。今日がユリに告白する最後のチャンスなのでした。
そんなところにまさかの強盗が。しかし例え強盗だったとしても伊吹を止めることはできません。学ランを脱ぎこれを売って金にしてくれと伊吹は強盗を説得するのでした。まさかの行動に強盗が驚いているなか、さらなる驚きの刺客が伊吹とユリの帰路と恋路を邪魔しに来なす!!果たして伊吹はユリに告白することができるのか!?
この作品について、藤本タツキ先生はジャンプSQ.編集部から「16Pで出来る事を31Pでやっている」と言われたとのことです。そして「思えば僕の漫画は今に至るまで全て16Pで描けるものを31Pでやっている気がします。」とのこと。
本作では、伊吹の決意を邪魔するように、悪天候→先生→強盗→驚きの刺客とだんだん大喜利的にスケールアップしていきます。それらすべてを跳ねのける熱意と決意。熱い男・伊吹の恋はどうなってしまうのか!?

凄腕の女殺し屋シカク。彼女のもとにある男から依頼が入ります。「自分を殺してくれ」と。
男から依頼を聞いたシカクは躊躇なく男の頭にナイフを投げつけます。見事頭に刺さりますが男は死にません。次にシカクはショットガンで男の頭を打ち抜きます。しかし吹っ飛んだ男の頭は見る見るうちに再生していきます。
男は3500年生きる吸血鬼ユゲル。長く生きている間に面白いことはひとつ残らずしてしまい退屈で仕方ない、しかし吸血鬼のため死ねないので凄腕の殺し屋シカクならば、と一縷の望みで依頼したのでした。しかしシカクでもユゲルを殺すことはできませんでした。シカクはユゲルへ死ねないなんてかわいそうと言います。ユゲルも殺し屋としてしか生きられないシカクへ「お前も俺と同じだな」と伝えます。その言葉を聞いたシカクは初めて自分を許容してくれたとユゲルへ恋心を抱きます。
再びユゲルを訪ね胸が苦しくて夜も眠れないと伝えますが、病院へ行きなさいといなされてしまいます。素直に病院へ行きますが、指名手配犯のシカクは病院に行ったところを警察に狙われてしまいます。テレビ中継されながら銃弾を受けるシカクですが、シカクはテレビカメラに向かってユゲルへ自分が健康であったこと、お医者さんから恋煩いと言われたことを大声で伝えます。それを観たユゲルは腹を抱えて笑います。
400年ぶりに笑ったというユゲルは、シカクを助けに行きます。しかしシカクは銃弾を受け瀕死の状態です。それを観たユゲルはある行動に出ます。。。悲しき吸血鬼と殺し屋の恋はどんな結末を迎えるのでしょうか。

藤本タツキ先生の初期短編集「17-21」を紹介していきました。鬼才と呼ばれる藤本先生の初期作品短編集。
どの作品もエッジの効いたアイデアだったり理屈を超えた熱量だったり、今の藤本作品に通ずる片鱗がありました。今の作品に通ずる”何か”が本作には詰まっているように思えます。「ファイアパンチ」「チェンソーマン」ファンの方々もぜひ手に取って読んでみてください。

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